正しい姿勢とは?|20年以上体と向き合ってきた私が今思うこと

「正しい姿勢って、どんな姿勢ですか?」

20年以上、この仕事をしてきて、本当によくいただく質問です。

インターネットで検索すると、

「胸を張りましょう。」
「背筋を伸ばしましょう。」
「骨盤を立てましょう。」

そんな情報がたくさん出てきます。

もちろん、それらには研究に基づいた考え方もあり、私はそれを否定したいわけではありません。

ですが、そのたびに私は、もっと根本的なことを考えてしまうのです。

「そもそも、『正しい』って何だろう?」

「正しい」とは誰が決めるのでしょう?

私たちは、自然が生み出した存在です。
その自然の創造物である体に、「正しい」「間違っている」というものは、本当にあるのでしょうか。

「正しい」という言葉には、基準があります。
では、その基準は誰が作ったのでしょう。

それは、人間です。

人体について研究し、基準となる数値を導き出すことは、とても大切なことです。
その積み重ねがあるからこそ、医学も運動学も発展してきました。
私も、そのことはよく理解しています。

でも、その基準が、そのまま一人ひとりの体に当てはまるとは限りません。

男性と女性では違います。
年齢によっても違います。
同じ人でも、朝と夜では違います。
季節によっても変わります。
昨日と今日でも、体の状態は変化しています。

そんな体に対して、

「これが正しい姿勢です。」

と、一つの形を当てはめようとすることに、私はどこか不自然さを感じるのです。

「正しい答え」があると思うようになった私たち

では、なぜ私たちは「正しい姿勢」を知りたくなるのでしょうか。
私は、その背景には、私たちが育ってきた環境もあるように思っています。

子どもの頃から、
「正しい答え」を見つける教育を受けてきました。

テストには○と×があり、正解に近づくことが評価されます。
それは学ぶ上で、とても大切なことです。

そして今は、インターネットで検索すれば、さまざまな情報や数値がすぐに手に入ります。

「適正体重」
「理想の姿勢」
「正しい歩き方」
「正しい座り方」

便利になった一方で、「正しい基準」があふれる時代にもなりました。

だからこそ、その基準から少し外れるだけで、

「私は間違っているのではないか。」
「この姿勢ではダメなのではないか。」

と、不安になってしまう方も少なくありません。

でも、本来、基準は自分を不安にするためのものではないはずです。

基準は、人と比べるためにあるものではなく、参考にするためのもの。

そして最後に耳を傾けるべきなのは、自分の体が教えてくれる感覚です。

大切なのは、自分の体がどう感じているか

私が大切にしているのは、
基準に合わせることではなく、自分にとって良い状態かどうか。
ということです。

今、心地いいのか。
苦しいのか。
無理をしていないのか。
自然に呼吸ができているのか。

本来、私たちの体は、その答えを教えてくれています。

ところが、「正しい姿勢」を意識し過ぎるあまり、その感覚を無視してしまう人が少なくありません。

私は、その方が、私たちを創った自然に反しているように思うのです。

私も「正しい姿勢」を追いかけていました

正しい姿勢について考え込む女性

実は、私自身もそうでした。

若い頃は、

胸を張る。
背筋を伸ばす。
お腹に力を入れる。

それが良い姿勢だと思い、一生懸命頑張っていました。

でも、長く続きません。

疲れる。
苦しい。
気づけば元に戻ってしまう。

「私の努力が足りないのかな。」

そんなふうに思っていた時期もありました。

苦しくなるのは、努力不足ではありません

レッスンに来られる方も、
「良い姿勢を意識してくださいと言われたので頑張っています。」
とおっしゃることがあります。

でも、その頑張りが、かえって体を苦しくしていることがあるのです。

その理由は、とてもシンプルです。
体の状態が整っていないまま、形だけを変えようとしているから。

例えば、ねじれた積み木を力で真っすぐ積もうとしても、どこかに無理がかかります。
人の体も同じです。

ねじれや力みがある状態で、「正しい姿勢」を維持しようとすれば、余計な力が必要になります。
だから疲れるのです。

私が見ているのは「姿勢」ではありません

レッスンで私が見ているのは、姿勢そのものではありません。
その姿勢をつくっている体の状態です。

受講生の体の動きを観察しながらレッスンを行うYURUKU®代表ノリコ

長年積み重ねてきた動き方のクセ。
体のねじれグセ。
無意識に入ってしまう力み。
そして、自分の体を感じる感覚のズレ。

こうしたものが積み重なって、その人の姿勢になっています。

また、不調や体型の崩れの原因の多くが、その積み重ねによるもの。

だから私は、姿勢だけを変えようとはしません。
まずは体が自然にバランスを取りやすい状態へ整えていきます。

そうすると、姿勢は「作るもの」ではなく、「変わっていくもの」になるからです。

10年以上前の記事を読み返して気づいたこと

最近、10年以上前に書いたアメブロの記事を読み返していました。

そこには、こんな言葉がありました。

「正しいとか、間違っているとか、本当のところは分からない。」

読み返した瞬間、

「ああ、今も同じことを思っている。」

そう感じました。

もちろん、この10年で学びは増えました。
体の見方も大きく変わりました。

でも、

「人の体を、正しさで縛りたくない。」

という思いは、あの頃からずっと変わっていなかったのです。

「遊び」があるから、戻れる

昔の記事には、

「遊びがあるからブレない。」

とも書いてありました。

当時は感覚的に書いていましたが、今ならその意味がよく分かります。

ブレない体とは、ガチガチに固まった体ではありません。
少し崩れても、また自然に戻ってこられる体です。

しなやかだから安定する。
余裕があるから戻れる。

私は、その状態こそが、本当の意味でバランスの取れた体だと思っています。

62歳になった今、思うこと

私は今、62歳です。(2026年現在)

62歳のYURUKU®代表ノリコの後ろ姿

姿勢を意識して生活しているわけではありません。
筋トレをストイックに続けているわけでもありません。

それでも、大きく体を崩すことなく過ごせています。

それは、「良い姿勢を維持している」からではありません。
崩れても、自然に戻れる体になったからです。

人の体は、一日の中でも何度もバランスを変えています。

立つ。
歩く。
座る。
荷物を持つ。
作業をする。
寝る。

だから大切なのは、

崩れないことではなく、

戻れること。

私はそう考えています。

正しい姿勢を探すより、自分の感覚を育ててほしい

「正しい姿勢になりたい。」

そう思う気持ちは、とてもよく分かります。

でも、その前に、
今の自分の体がどう感じているのかに、耳を傾けてみてください。

どこに力が入りやすいのか。
どんな動きが苦手なのか。
何をすると楽になるのか。

それを知ることが、自然に整う体への第一歩です。

だから私は、これからも

「正しい姿勢を作りましょう。」

とは、お伝えしません。

お伝えしたいのは、

「自分の体が本来持っている力を引き出し、自然に整う状態を育てていきましょう。」

ということです。

私たちは、自然の中で生まれた存在です。
だからこそ、自然が教えてくれる感覚を信じてほしい。

自分は今、どう感じるのか。

その感覚に耳を傾けること。

それこそが、自分らしく、心地よく生きるための第一歩なのではないかと、私は思っています。


私は「正しい姿勢」だけでなく、「正しい歩き方」についても同じように考えています。
もし興味がありましたら、こちらの記事もご覧ください。
▶「正しい歩き方」をやめたら、体が楽になった理由― 感覚を取り戻す姿勢と歩行の考え方

▶姿勢と歩き方は正さない|ねじれグセを解くことで体は自然に整う
▶もうこれ以上、足したくないと思ったときに読む話|体内インフラを整えるという身体改革

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