真っ直ぐに見えていた足が、実は斜めだった──身体地図を書き換えてわかったこと

「えっ?これが正面なの?」

そんな声が出るほどの出来事が、レッスンでありました。

今回ご紹介するのは、60歳になったばかりのEさん。
以前から身体の使い方にご自身では気づけないクセがあり、

自分の身体の使い方の癖だったり、現在地が自分ではわからず……

と感じておられました。

そんなEさんが、
身体地図を書き換える練習を始めたのは、1か月前のことでした。

身体地図の書き換えについては
▶【また一つ、新しい発見がありました。──身体地図が変わると、身体も変わる】で詳しく書いています。

「こんなんでいいの?」と思いながら動いたら、身体が変わった

身体地図を書き換える練習を初めて行った日のことは、以前の記事でもご紹介しています。

その日のEさんには、

「こう動いてください」
「バランスはこんな感じです」
「こうやって立ってください」

といった形を、イメージでお伝えしました。

実際に身体を見ながら形を合わせてもらうのではなく、
頭の中に新しい身体の地図を描き、
そのイメージを使って動いていただいたのです。

そのとき、Eさんからこんな感想をいただきました。

自分の身体の使い方の癖だったり、現在地が自分ではわからず……

と感じていた中、

全く頑張ることなく、不安いっぱいに動いていたら、不思議なことに身体が変わっていて😳

そして、

こんなんでいいの?って(笑)

と。

身体のクセに悩みながらも、
イメージを頼りに動いてみたら、身体が変わった。

そこから1か月、
レッスンでお伝えしたイメージを思い出しながら過ごしていただきました。

1か月後、さらにその先へ

1か月ぶりに身体を見てみると、
Eさんの身体は以前よりバランスが良くなっていました。

そこで今日は、今の身体を見ながら、

「以前より良くなったところ」
「まだ残っている課題」

を確認していきました。

そして、そこからさらに身体地図を書き換えるための、
新しい地図をお渡ししました。

レッスンの始めにEさんは、
「地図を渡してもらって練習するのは、とても気が楽でした」
とおっしゃっていました。

1か月前には、
「自分の身体の現在地がわからない」と感じていたEさん。

今は、今の身体の状態に合わせた新しい地図を受け取り、
そこからさらに身体を変えていく段階に進んでいます。

そして、ここからが今日のお話です。

「真っ直ぐに見えます」

今日、身体地図を書き換える練習をさらに深めていく中で、
私はEさんのつま先の向きに注目しました。

実際には、つま先が正面を向いていません。

そこで、いつもの状態をEさん自身にも上から目で見ていただきました。

すると、「真っ直ぐに見えます💦」とおっしゃったのです。

私は、ちょっと驚きました。

実際にはつま先が斜めになっているのに、
目で見ても「真っ直ぐ」に見えていたのです。

そこで、身体地図を書き換えるイメージで動いていただきました。
すると、つま先は正面を向くようになりました。

ところが今度は、その足を上から見て、
「正面に向いているように見えません💦」
とおっしゃったのです。

写真で比べてみると、その違いははっきりしています。

Eさんのつま先の比較。左は本人には真っ直ぐに見えていた実際には斜めの状態、右は真っ直ぐに整えた後の足元

上は、Eさんが
「つま先が正面に向いている」と感じていたとき。
実際には、つま先は斜めを向いています。

下は、身体地図を書き換えた後。
実際には、つま先が正面を向いています。

ところがEさんには、
こちらが「斜めになっている」ように感じられたのです。

「今日のつま先は大きかったです」

レッスン後、Eさんからこんなメッセージをいただきました。

毎回衝撃を受けてきましたが、その中でも今日のつま先は大きかったです😂

と。Eさんはこれまでも、私が身体のクセを再現して見せるたびに、

全然気づいてなかった😂〜

と思いながら見ていたそうです。でも、

だから自分の身体はこうなっているんだととてもわかりやすい

そして、

そのクセを逆転させるイメージで!

というアドバイスもわかりやすく、
ありがたいとおっしゃってくださいました。

身体のクセをただ「直してください」と言われても、
自分ではそのクセに気づいていないのですから、
どう直せばいいのかわかりません。

だからこそ私は、Eさんご自身が、
「自分の身体は今、こうなっているんだ」と理解できるように、
クセを再現してお見せしています。

そして、そのクセとは逆の方向へ身体地図を書き換えていきます。

今回も、その続きでした。

「こんなに斜めってるのが実際の正面なの?」

ところが、今回のつま先でEさんが受けた衝撃は、
これまでとは少し違いました。

単に、「足が斜めになっていた」ということではありません。

自分の目で見ても、
その斜めを「真っ直ぐ」だと思っていた。

ここが、Eさんにとって大きな衝撃だったのです。

そして、身体地図を書き換えた後には、
今度は正面を向いている足を見て、
「正面に向いているように見えない」と感じた。

そのことについて、
Eさんからこんなメッセージをいただきました。

Eさんから届いたレッスン後のメッセージ。「こんなに斜めってるのが実際の正面なの?ウソでしょ〜」と、自分の中の正面の地図が違っていたことへの驚きを綴っている

こんなに斜めってるのが実際の正面なの?ウソでしょ〜って思ってました😅
正面に修正したいのに、自分の中の地図がそもそも違っているなんて怖すぎです😭
それに気付くことができて良かったです、ありがとうございます!

この言葉を読んで、私も改めて考えました。

見れば、正しくわかるとは限らない

私たちは、「自分の身体を見れば、今どうなっているのかがわかる」と思いがちです。

でも、今回のEさんの体験は、それを考え直すきっかけになりました。

実際には斜めなのに、真っ直ぐに見える。
実際には正面なのに、斜めに見える。

一体、なぜなのでしょう?

私は普段のレッスンで、
「身体を見ないで、イメージだけで動いてください」とお伝えすることがあります。

これまでも、その大切さを感じていました。

でも今回の出来事で、私はさらにその意味を感じるようになりました。

見ることもまた、
自分の中にある身体の地図に影響されることがある。

目に入ったものを、そのまま捉えているのではなく、

「これが真っ直ぐ」
「これが正しい位置」
「これがいつもの自分」

という、自分の中にある基準を通して見ているのです。

Eさんの場合は、
その「正面」の地図自体が、実際の身体とはズレていました。

だから、外を向いている足を見ても「真っ直ぐ」、
正面を向いた足を見ても「斜め」と感じたのです。

私たちは「自分基準のフィルター」を通して見ている

考えてみれば、これは身体だけのことではないのかもしれません。

私たちは、

「これはこういうもの」
「私はこういう人」
「この年齢なら、これくらいは仕方ない」
「これは私には無理」

そんなふうに、
これまでの経験からつくってきた自分なりの基準を持っています。

そして、その基準を通して物事を見ています。

言ってみれば、「自分基準の思い込みフィルター」をかけているようなものです。

長く生きてきた私たちは、
それだけたくさんの経験を積んできました。
だからこそ、そのフィルターも、なかなか分厚い😂

でも、そのフィルターがあることに気づけたら、
「本当にそうなのかな?」と、一度立ち止まることができます。

今回のEさんのつま先は、まさにそのきっかけになりました。

「正面に修正したい」と思っていたのに、
そもそも自分の中にある「正面」の地図が違っていた。

そのことに、ご自身で気づかれたのです。

そして、気づけたからこそ、新しい地図をつくっていくことができます。

家族の身体を見ても「どこがどう」はわからない

そういえば、レッスンではこんなお話を伺うこともよくあります。

「家族の身体が歪んでいるのは、なんとなくわかるんです。
でも、どこがどうなっているのかは、さっぱりわからなくて……」

確かに、「なんとなく歪んでいる」ということはわかっても、
「肩がどうで、骨盤がどうで、足がどうなっている」といったところまで読み取るのは、
経験を積まなければ難しいものです。

今回のEさんのつま先の出来事を通して、
私は、このことも少し違って見えるようになりました。

Eさんは、実際にはつま先が斜めになっているのに、
「真っ直ぐに見えます」とおっしゃいました。

つまり、目にはちゃんと自分の足が入っているのに、
見えているものを、そのまま身体の状態として認識できていたわけではなかった。

一方で、家族の身体を見て、
「歪んでいるのはわかるけれど、どこがどうなのかわからない」というのも、
もしかすると同じようなことなのかもしれません。

見えていることと、
身体の状態を正確に読み取れることは、同じではない。

今回のEさんのつま先は、そんなことにも気づかせてくれました。

「変化がわからない」のも、同じことなのかもしれない

実は、私はこれまでのレッスンでも、
たびたび不思議に思うことがありました。

レッスン前とレッスン後の写真を並べると、
明らかに身体の歪みが変わっている。

それなのに、その写真をお見せしても、
「変化がよくわかりません」とおっしゃる方がいるのです。

そのたびに、「えええ〜( ゚Д゚)」となっていました(笑)。

そんなときは、
どこを見ると変化がわかるのか、
下の画像のように、
写真に印をつけたり、直線を引いたりして、一緒に見ていただきます。

高校生のレッスン前後の姿勢を比較した写真。肩や骨盤、脚などに基準線を引き、身体の変化を確認している

すると、「ああ!」となる。

そこで初めて、
「ここが変わっていたんですね!」と、変化を認識されるのです。

今回のEさんの出来事を通して、
私は、これまで起きていたことの理由がわかった気がしました。

身体が変わっていないのではなく、
変化を認識するための基準が、まだ以前のままだということです。

ビフォーの身体が長く続いていると、
それが自分にとっての「普通」になります。

身体が変化していても、
その変化した身体を、自分の中にある「普通」という基準で見てしまう。

つまり、私たちは、
目の前の身体をそのまま見ているのではなく、
自分の中にある身体の地図を基準にして見ている。

今回のEさんのつま先で起きていたことは、
これまで私がレッスンで経験してきた
「変化がわからない」という現象にもつながりました。

そして、これは指導する側にとっても大切なこと

ここまで考えてみると、もう一つ大切なことが見えてきます。

姿勢や身体の使い方を指導するとき、
指導者もまた、自分の中にある身体の地図を基準にして相手の身体を見ています。

「これが真っ直ぐ」
「これが正しい位置」
「これが良い姿勢」

そうした基準を持って、相手の身体を見ているわけです。

そのため、指導者自身が、
自分の身体感覚や身体の地図を見つめ続けることは、
とても大切なのだと思います。

「自分にはこう見えているけれど、本当にそうなのか?」
そうやって、自分自身の身体と向き合い続けること。

それが、誰かの身体を見るときにも必要なのだと思います。

なぜ、見えるようになったのだろう

私自身、これまで20年以上、
たくさんの方の身体を見てきました。

でも、今のようなパーソナルレッスンができるようになったのは、
人の身体を見てきた経験だけではないと確信しています。

自分自身の身体と向き合い、動いて、感じて、確かめてきたこと。

その積み重ねがあったからこそ、

今では、自分以外の誰かの体を見ても、
「ここがねじれている」
「こんな動きをしたら、ここにねじれが出てくるよね」
と"ねじれ"を感じ、"ねじれグセ"をイメージできるようになりました。

その私には見えている"ねじれ"や"ねじれグセ"を
「全然わからない」
と生徒さんたちはおっしゃいます。

見えることと、わかること

今回のEさんのつま先を見て、
私はその違いが腑に落ちた気がしました。

「見ればわかる」のではなく、
見えているものを読み取るための身体地図がある。


同じものを見ても、その地図が違えば、受け取るものも違う。

そして、その地図もまた、
自分自身の身体と向き合い続けることで、
少しずつ変わっていく。

目で見ても、
ここまで自分の身体の地図に合わせて見えてしまうのだと、
改めて驚かされた出来事でした。

長く身体を見続けてきたからこそ、
まだまだ身体から教えてもらうことがあります。

身体地図を書き換えるということ

身体の周囲にさまざまな線や点が描かれた女性の横向きの立ち姿を表す、身体地図を書き換えるイメージ

身体地図を書き換えるというと、
「身体を正しい位置に持っていく」ということをイメージされるかもしれません。

でも、私がレッスンで行っているのは、それだけではありません。

「今、自分の身体はどうなっているのか」を知り、
「自分が正しいと思っているものは、本当にそうなのか」を確かめ、
そこから新しい身体の地図をつくっていく。

今回のEさんは、その過程を1か月かけて進み、
今日はさらにその先へ進みました。

そして、そこで初めて、
「自分の中の地図がそもそも違っていた」ということに気づかれたのです。

身体を変えるためには、
いつも「もっと頑張る」必要があるわけではありません。

時には、自分が正しいと思っていることを、
いったん横に置いてみる。


そこから、新しい身体の地図がつくられていきます。

私たちの身体には、自分でもまだ気づいていない地図があります。

その地図を少しずつ書き換えていくと、
「えっ、今までこれを正しいと思っていたの?」という発見が出てくる。

それが、身体を面白いと思える瞬間なのです。

Eさんが今回の経験を通して、
「それに気付くことができて良かったです」と感じられたように。

身体を知ることは、
自分が当たり前だと思っていることを知り直すことでもある。

私はそんなふうに感じています。

身体って、本当に面白いですね。

【Information】

■パーソナル・ボディリコンディショニングコース

1月スタート9期生 11/7(土)8:00募集開始

本コースは定員制のため、募集を行わない期や、募集開始後に満席となる場合があります。

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