体は“正しさ”では整いません|スクワット・ヨガ・バレエで体を壊してしまう人がいる本当の理由

健康のために続けていることなのに、
好きで続けていることなのに、
体がつらい。
それでも、
「もう少し頑張れば良くなる」
「やり方を覚えたら楽になる」
そう思って続けていませんか?
もし今、どこかに痛みや違和感があるなら、
それは、
体の状態や、今の動き方を見直す必要があるというサインです。
体より先に「正しい形」を当てはめていませんか?
ヨガやバレエ、トレーニングなどに取り組み、
体に不調が出てくると、
「これは体に悪いのではないか」
「年齢のせいだから仕方がないのかな」
「自分は運動が苦手だから」
そう考える方も少なくありません。
ですが問題なのは、 体の状態を見ないまま、
正しいとされる形を当てはめていることです。
その場ではできているように見えても、
体の中では無理が起きています。
「正しい」と信じて続けた結果、体が崩れていく
ある方は、
「膝をつま先より前に出さないように」
そう指導され、スクワットを続けておられました。
しかし、その結果、
・足首が使えない
・しゃがみにくい
・股関節や腰に負担が集中する
という状態になっていました。

もちろん、膝を前に出し過ぎないよう注意したほうがよい場合もあります。
大切なのは、
「膝を前に出してはいけない」というルールを、
すべての人に同じように当てはめることではありません。
その人の足首や股関節の状態、
身体の使い方などによって、
適したスクワットの方法は変わるからです。
実際に、スクワットに関する研究でも、
膝の前への動きを制限すると、
・膝への負担は減る一方で
・股関節や腰への負担が大きくなる
という傾向が示されています。
つまり、一か所への負担を減らすことが、
必ずしも身体全体にとって良いとは限らないのです。
その方の場合は、
「膝を前に出さない」ということを守り続けた結果、
別の場所に負担が集中していました。
参考文献:
Fry AC, Smith JC, Schilling BK. Effect of Knee Position on Hip and Knee Torques During the Barbell Squat. Journal of Strength and Conditioning Research. 2003;17(4):629–633.
筋力不足だと思われていた痛みの原因
先日も、
お尻の横に痛みが出るという方がおられました。
病院のリハビリでは、
「中殿筋が弱いですね」 と言われ、
中殿筋を鍛えるトレーニングを続けておられたそうです。

中殿筋は、
足を外側に開く(股関節の外転)ときに働く筋肉です。
また、歩行時や片脚で体を支えるときには、
骨盤が左右に傾かないよう安定させる役割があります。
ところが、体のバランスが崩れていると、
中殿筋が働きにくい状態になるため、
骨盤を安定させにくくなることがあります。
その結果、片脚で体を支える場面では、
下の画像のように骨盤が傾いたバランスになることがあります。

お尻の横に痛みが出る方には、
このようなバランスで立ったり歩いたりしている方もおられます。
実際に起きていたこと
ところが実際に動きを見せていただくと、
左右の股関節の使い方には大きな違いがあり、
ご本人が真っすぐだと思っている位置もズレていました。
その状態で片脚に体重を乗せると、
お尻を横に突き出さなければバランスが取れません。
そこで筋力トレーニングではなく、
まずご自身の感覚のズレに気づく練習を行いました。
すると、
お尻を横に突き出す動きが自然となくなり、
痛みも出なくなったのです。
さらに、
その感覚で椅子に座ったり立ったりしていただくと、
「楽です」
とおっしゃいました。
中殿筋は弱っていませんでした
私はその時、
「中殿筋は弱っていませんよ」
とお伝えしました。
実際に、
その方のねじれグセを私自身の体で再現して片脚立ちをすると、
お尻を横に突き出し、足の指で踏ん張らなければ立てません。

一方、ねじれを解いて立つと、
お尻を横に突き出したり、足の指で踏ん張らなくても立てます。

この方の場合、問題だったのは、
中殿筋の筋力そのものではなく、
中殿筋が働きにくいバランスで立っていたことでした。
もし、
そのズレに気づかないまま
ランジなどの中殿筋を鍛えるトレーニングを続けていたら、
頑張るほど、その動きは強化されていたでしょう。
知らない動きは再現できません
必要だったのは、
筋力を増やすことではありませんでした。
ご本人が知らなかった体の使い方を、
感覚として知ることでした。
私たちは、知っている動きは再現できます。
一方で、 知らない動きは再現できません。
いくら意識しても、
いくら正しい形を教わっても、
感覚として知らなければ、 元の動きに戻ってしまいます。
だから私は、
まず感覚のズレに気づくことを大切にしています。
体は、
正しい形を覚えることで変わるのではありません。
知らなかった感覚を知ることで変わります。
踊りの中でも同じことが起きています
ここまでは、 トレーニングの例でした。
実は同じことが、
バレエやフラダンスなどの踊りの中でも起きています。
バレエで起きていること
バレエでは、
パッセの動きでお尻に痛みが出る方がおられます。
パッセはこちら。

お尻が痛くなる原因は、
股関節で外旋できないバランスのまま、 脚を上げていることです。
また、
アンドゥオールの動きで、
膝や足首を痛めてしまった方もおられました。
アンドゥオールはこちら。

膝や足首を痛めてしまった方は、
股関節で外旋できない状態のまま、
膝をねじって、 つま先を外へ向けていたのです。
痛みだけでなく、
思うように動けないことで先生から繰り返し注意され、
自信を失ってしまう方もおられます。
ですが、体の状態が整い、必要な動きを理解すると、
頑張らなくても自然にできるようになるのです。
大人バレエでは、
こうした状態のままパッセやアンドゥオールを続けることで、
お尻や股関節、膝などに負担が集中することがあります。
実際に「パッセでお尻が痛い」というお悩みについては、
別の記事で詳しく解説していますので、
バレエをされている方はぜひあわせてお読みください。
フラダンスで起きていること

フラダンスで股関節を痛めた方もおられます。
もともと脚にねじれがあり、
膝とつま先を正面に向けられない状態だったにも関わらず、
無理に揃えて踊り続けていました。
どのケースも共通しているのは、
体の状態よりも、形を優先していることです。
そして、
頑張るほど、 そのズレは強化されていきます。
その結果、
不調だけでなく、 体型の崩れとしても現れていくのです。
ヨガなど健康のための運動でも、同じことが起きています
ここでも、冒頭でお伝えしたことが前提です。
問題は、ヨガそのものではありません。
今の体の状態を知らないまま、正しいとされる形を当てはめることです。
ヨガの木のポーズで起きていること
たとえば、ヨガの木のポーズ。
見た目には安定しているように見えても、
体の中では無理が起きているケースが少なくありません。
脚を上げる側だけでなく、
軸となる脚がねじれたまま片脚立ちになると、
もともとのねじれが強まり、
・骨盤が傾く
・足首が不安定になる
・体がまっすぐ保てなくなる
という状態が起こります。

すると、 倒れないように
股関節や膝関節、足関節に負担をかけながら踏ん張ったり、
上半身を反対側へ傾けたりして、
無理にバランスを取ることになります。
また、
股関節の屈曲や外旋ができていないまま脚を上げると、
骨盤が引き上がり、体の軸そのものが崩れます。
股関節で支えられない状態を膝のねじりで補うと、
足首が外側へ倒れ、 膝や足首に大きな負担がかかります。
一見すると、向かって左の女性の方がバランスが悪く見えます。

なぜなら、向かって右の女性は、
上半身は真っ直ぐに見えるため、
本人も周囲も「きれいにできている」と思いやすいからです。

しかし実際には、
足首が大きく外側へ倒れ、
膝にも強いねじれが生じています。
私から見て、
心配になるのは、こちらの女性なのです。
見た目の安定と引き換えに、
関節へ大きな負担をかけながらバランスを取っている状態だからです。
このように、一見ポーズは取れていても、
体の中ではねじれと緊張で支えていることがあります。
そして、こうした使い方を続けていると、
体はそれを「いつもの状態」として覚えていきます。
頑張って整えているつもりの動きが、
結果として、ねじれを強めることにつながってしまうのです。
体を作っているのは、日常動作です
運動をしないと体が鈍るのではないか。
何かをしないと不健康になるのではないか。
そんな不安から、
新しい運動を始める方もおられます。
もちろん、体を動かすことが好きな方にとって、
運動は楽しみでもあり、
心や体に良い影響をもたらすものでもあります。

けれども、1日の中で最も多く繰り返しているのは、
特別な運動ではなく、日常動作です。
立つ。
歩く。
座る。
物を持つ。
何気なく繰り返している一つひとつの動きが、
毎日、体に積み重なっています。
今の体を大きく作っているのは、
日常の中で繰り返している動きのクセです。
体の歪みや不調、体型の崩れも、
特別な運動の時間だけを見ていては分かりません。
1日の大部分を占める日常動作の中にこそ、
その原因が隠れていることがあります。

応用したあと、基本に戻れることが大切です
トレーニングや踊りは、体の応用です。
だからこそ大切なのは、
動いたあとに、無理なねじれや緊張を残さず、
自分の基本の状態へすっと戻れるかどうかです。
でも、戻れないまま続けると、
- 少しずつズレが積み重なり
- やがて痛みとして現れることがあります
それは突然起きたことではなく、
積み重ねの結果です。
体とつながり直すということ
私が大切にしているのは、
自分の体を、自分で守れるようになることです。
そして、
好きなことを、不安なく続けられる体になること。
頑張ることではなく、
無理をすることでもなく、
体とつながり直すこと。
その一歩が、
これからの体を変えていきます。
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■体が整わない理由
姿勢や歩き方を整えようとしても、なぜ体は変わらないのか。
その理由を、日常の動きにある「ねじれグセ」という視点から解説しています。
▶姿勢と歩き方は正さない|ねじれグセを解くことで体は自然に整う
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